豆腐ようの紅麹は心配ない?サプリ騒動との製造法の違いと安全性検査について徹底解説

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食品工場で衛生服を着た作業員が豆腐ようを製造する様子を描いた横長イラスト。仕込みから箱詰めまでの工程が分かる食品衛生基準対応の作業風景

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2024年に発生した紅麹サプリメントによる健康被害の報道を受け、沖縄の伝統食品「豆腐よう」の安全性について、多くのお客様よりお問い合わせをいただいております。

本記事では、食品科学および発酵学の観点から、伝統的な「豆腐よう」と「問題となったサプリメント」の決定的な違い、そして私たちが実施している多重の安全管理体制について、データを交えて詳細に解説します。

豆腐ようの全体像については『豆腐よう完全ガイド』をご覧ください」この記事はその一部です。


目次

1. 根本的な違い | 「伝統的発酵」対「工業的成分濃縮」

まず、消費者の皆様に最も理解していただきたい点は、豆腐よう作りにおいて行われる「発酵」と、サプリメント製造における「抽出・濃縮」は、全く異なるプロセスであるということです。

菌株の由来と性質

私たちが豆腐ように使用している紅麹菌は、数百年にわたり沖縄の高温多湿な気候の中で選抜され、食経験を積み重ねてきた「伝統株」です。これらは、風味や保存性を高めることを主目的としており、特定の薬効成分だけを過剰に産生させるような人為的な遺伝子操作や無理な培養は行われていません。

一方、一部の健康食品やサプリメントで使用される紅麹は、コレステロール低下作用のある成分(モナコリンKなど)を効率よく得るために、特殊な培養条件で育てられたり、成分抽出のために変異誘導されたりした株が使われることがあります。今回問題となった事例も、伝統的な食品利用の範疇を超えた利用法に起因する可能性が指摘されています。

摂取量と身体への負担

項目豆腐よう紅麹サプリメント
1回あたりの摂取量爪楊枝の先で少しずつ(数グラム程度)錠剤として毎日規定量
成分の濃度食品としての自然な含有量有効成分が高濃度に濃縮
利用目的味、香り、食感を楽しむ(嗜好品)特定の健康効果を期待する(機能性)

豆腐ようは、泡盛と共に少しずつ舐めるようにして味わうものです。豆腐ようを毎日バケツ一杯食べる人はいません。食品として自然に含まれる成分量と、サプリメントとして濃縮された成分量では、生体への影響度(リスク)の桁が異なります。

2. カビ毒「シトリニン」のリスク管理について

紅麹の安全性を語る上で、避けて通れないのが「シトリニン」という物質の存在です。これは、一部の紅麹菌が発酵過程で生成する可能性のあるカビ毒(マイコトキシン)の一種で、腎臓に悪影響を与えることが知られています。

「やっぱり危険なのでは?」と思われた方、ご安心ください。現代の豆腐よう製造においては、以下の徹底した対策が講じられています。

対策① | シトリニン非生成株の選定(ゲノムレベルの管理)

現代のバイオテクノロジーにより、紅麹菌の遺伝子解析が進んでいます。私たちは、そもそもシトリニンを生成する遺伝子を持っていない株、あるいは生成能力が極めて低く実質的にゼロである株を厳選して使用しています。これは「出た毒を取り除く」のではなく「最初から毒を作らせない」という根本的な対策です。

対策② | 製造ロットごとのモニタリング検査

菌株が安全でも、培養条件が変われば代謝が変わる可能性があります。そのため、製造された豆腐ようは定期的に第三者検査機関へ提出され、シトリニンが含まれていないか(または食品衛生法等の基準値を大幅に下回っているか)の分析を行っています。

3. 沖縄県工業技術センター等の公的機関との連携

沖縄県では、豆腐ようという重要な地域資源を守るため、県の研究機関(沖縄県工業技術センターなど)が中心となって紅麹菌の安全性研究を長年行ってきました。

私たちが使用している紅麹スターター(種菌)は、こうした公的な研究機関の指導や、信頼できる種菌メーカーから供給された、来歴の確かなもののみを使用しています。出所不明の菌や、海外から個人的に輸入した未検査の紅麹を使用することは一切ありません。

4. 結論 | 正しく恐れ、正しく楽しむために

2024年のサプリメント問題は、私たち食品製造業者にとっても、改めて「食の安全」と向き合う大きな契機となりました。しかし、過度な不安によって、数百年続いてきた豊かな食文化が途絶えてしまうことは、あまりにも悲しいことです。

  • 歴史的安全性: 琉球王朝時代からの長い食経験。
  • 科学的安全性: 現代分析技術によるシトリニンフリーの証明。
  • 製造的安全性: 伝統製法と徹底した品質管理の融合。

この3つの柱に支えられた豆腐ようは、自信を持ってお届けできる安全な発酵食品です。どうぞ、安心の裏付けがある「高貴な赤」を、今夜の晩酌のお供として心ゆくまでお楽しみください。

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この記事を書いた人

管理栄養士・調理師

病院食・学校給食、行政の料理教室講師などで、食と健康の専門家として合計17年の実務経験を積む。 現在も行政の立場から、住民の健康増進をサポートしている。

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